株式会社デンソーウェーブ

 

株式会社デンソーウェーブは、IAR Embedded Workbenchを導入することによって得られたメリットを次のように語っている。

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「IARの開発環境はコスト的なメリットも市場実績もあり、短期間での導入および立ち上げにも耐えうる製品と判断し採用しました。我々の製品は産業用途なので、エンドユーザの業務を止めないことが重要です。そういった製品のコアとなる領域にはオープンソースや信頼性の担保されていないツールは使用できません。エンドユーザに10年位利用されることが当たり前の製品なので、長期間安定して利用して頂くためには、IAR Embedded Workbenchのような高信頼性のツールで開発することが必要だと考えます。」

御社の事業内容とご担当されている業務について教えて下さい。

デンソーウェーブは、自動認識装置、産業用ロボット、プログラマブルコントローラ等の機器の開発、製造および販売を行っています。その中で我々の部門の役割はバーコードハンディターミナル、バーコードハンディスキャナおよびRFIDスキャナ等の開発です。バーコードリーダ製品開発については、その黎明期から30年以上の歴史があります。

IARシステムズ、またはIARシステムズの製品を知ったきっかけは何ですか?

IARシステムズ(以下IAR)の開発ツールについては展示会での紹介で知っていましたが、具体的にコンタクトが発生したのは、我々が新しいバーコードリーダ製品向けにARM Cortex-Mプロセッサを搭載したマイコンを検討した際に、半導体メーカからリファレンスツールとしてIAR Embedded Workbench for ARM (EWARM)を紹介してもらったのが最初です。また、別の開発チームで既に採用実績もあったのが安心材料となりました。

最初にご採用頂いた御社の製品は何ですか?

2000年代後半に発売した低価格帯のハンディスキャナーです。弊社としてARM Cortex-Mマイコンを初めて使用した製品です。

2015年頃にバーコードハンディターミナルの標準プラットフォームとして統合開発環境IAR Embedded Workbench for ARM (EWARM)を標準採用して頂いておりますが、導入の決め手となった理由は何ですか?

製品価格を下げるために、開発期間の短縮と、数種類あった開発環境を一本化することによる効率化を図る判断をしました。以前に導入していた開発ツールは、統合開発環境とリアルタイムOSをセットで購入する必要があったのですが、それらを別々に選択できるようにする事によってコストの最適化を図りました。

IARの開発環境はコスト的なメリットも市場実績もあり、短期間での導入および立ち上げにも耐えうる製品と判断し採用しました。また、開発を委託している協力会社にも広く知られていて導入障壁が低かったのも理由のひとつです。

半導体メーカが提供している無償の専用ツールもオプションのひとつとして検討しましたが、新規ツールへの習熟期間、テクニカルサポート面および長期的な共通プラットフォーム開発の視点から、早期に検討から外しました。

外注のソフトウェアハウス等と共同で開発するケースでは、半導体メーカごとの専用ツールは展開が難しいと思います。我々はIARのツールを導入したことによって、結果的に、従来の開発期間を大幅に短縮することが出来てコストダウンも達成できたので良かったです。

最初のお問い合わせから購入決定、購入後に至るプロセスで、IARの対応に満足されましたでしょうか?もし、他のサプライヤと違う点がありましたら教えて頂けますか?

問い合わせに対するレスポンスが非常に早い点について満足しています*。技術的な課題が出た際に対応可否の回答を直ぐ頂けるので開発が滞りません。他のツールメーカでは回答を保留されたまま時間が経ってしまうケースがあるのでレスポンス時間が短いのは大きなアドバンテージです。一方で、IAR以外のメーカ製ソフトウェアやユーザオリジナルソフトウェアとのプラグインインタフェースなど、恒久的な対策が必要な課題についても積極的に対応頂けると、今後更に良くなると思いますので頑張って下さい。

*IARシステムズでは1営業日以内に1次回答を約束しています。

EWARMには動的解析や静的解析アドオン機能があり、ひとつのツールでビルド/デバッグ/解析が可能ですが、このような機能に将来的にメリットを感じますでしょうか?

解析ツールに関しては以前から他社製品を使用しています。数種類のツールを部門間で横断的に利用しており、特定のプロジェクトだけをIARの解析ツールに切替えるのは難しい状況です。

我々開発チームにとって、解析ツール自体は必須です。実際に静的および動的解析ツールのお陰でソフトウェアの問題を見つけることが出来たことが少なからずあります。理想的には使用しているコンパイラから出力されたコードがそのまま解析できる環境があった方が効率的なので統合開発環境にアドオンされているIARの解析ツールも良いと思います。

今はソフトウェア開発の、どの時点で、どのレベルのコード解析を行うかというテーマについて解がひとつではないのでツールとの連携は将来の課題という認識です。

オープンソースや無償のツールと商用ツールの一番の違いは何だと思われますか?

有償ツールの価値は「安定性」と「性能」です。無償ツールも含めて他社のツールでは、突然ダウンするようなケースを経験していますが、IARのツールではそういう問題がなく非常に安定しています。コンパイラの性能についてもIAR Embedded Workbenchは優れていると感じます。

またテクニカルサポートをレスポンス良く受けられるため、開発作業がスムースに行えるのも有償ツールのメリットだと考えます。ひとつの例として、IARはドキュメントが充実していると思います。特に日本語ドキュメントが非常に充実しているので助かっています。

我々の製品は産業用途なので、エンドユーザの業務を止めないことが重要です。そういった製品のコアとなる領域にはオープンソースや信頼性の担保されていないツールは使用できません。エンドユーザに10年位利用されることが当たり前の製品なので、長期間安定して利用して頂くためには、IAR Embedded Workbenchのような高信頼性のツールで開発することが必要だと考えます。

ただし、アプリケーション領域に関しては、様々なエンドユーザおよび仕向地からのリクエストにも応えられる様、LinuxやAndroidなどのオープンソースへの対応も必要だと考えます。

「IoT時代のアプリケーション開発」のようなキーワードに今後(既に)関係する可能性はありますか?その際に開発サイドで新たに懸案となる事項はありますか?

既に無線モジュールが実装されたハンディターミナルもあって、スキャンしたデータをサーバーにアップロードするような使い方もされているので、IoTとは更に深く関わっていくことになります。携帯電話のQRコードを読み取ってデータを転送するようなシステムもその分野に入ってくると思います。

IoT化については弊社のロボット事業や制御コントローラ事業が先行すると思いますが、ハンディターミナル事業としても無線対応製品などが増えてくると思いますので、IARのツールもセキュリティ面を強化してもらえると良いですね。

その他、EWARMによって問題解決できた事例はありますか?

弊社ではマイコンのデバイスドライバを作製することもあるのですが、以前使用していたツールでは、使用するマイコンのドライバを作製する際に、CPUのレジスタ値はメモリマップからアドレス入力して、その値を参照しながらデバッグするという作業を強いられていました。それがIARのツールでは使用するマイコンをツール上で選択してから、プルダウンメニューでレジスタを選択してやれば値が一覧出来るのでドライバの作製作業が格段に楽になりました。

また、我々の製品開発は、ICE(エミュレータ)の利用頻度も高いのですが、IARの「I-jet」はUSB給電で別電源も要らず、筐体もコンパクトなため省スペースで非常に使い易いです。価格も抑えられていて導入に優しいです。

最後に、ツールそのものではありませんが、IARシステムズがメールニュースで配信しているコンテンツも役立っています。特に「ARM Cortex-A開発物語」などは、新人エンジニアの教育だけでなく、ARMプロセッサユーザに役立つ情報なので、これからもそういったユーザを助ける情報発信をお願いします。